「ご飯まだなんじゃないの?母さんが行くならこれ持ってけって。」

大きなリュックからいくつかのタッパーを取りだす八神くん。

電気はまだ復旧してないけれど八神くんが来てくれたおかげで懐中電灯やアロマキャンドルなんかも用意できた。

さっきまでに比べると部屋も見渡せる程度に明るくなった。

「最近、こういう降り方が多いじゃん?雷も鳴ってるし、佐奈不安だろうなぁって思ったらいてもたってもいられなくて。でもやっぱり来て良かったわ。もしかしたら停電になるかもって準備してきたけど本当になっちゃうとは…さすがに想定外。」

そう言うと「もう大丈夫。おいで。」と両手を広げてくれる。

八神くんの側まで行きそっとその胸にコツンと頭をつけるとギュッと力強く抱きしめてくれた。

「安心する…」

「そう?」

「うん…一人でどうしようかと思った。怖かった。」

「そっか。」

そう言いながら背中をトントンとしてくれる。

「八神くん…」

「ん?」

アロマキャンドルの明かりに照らされた八神くんの顔がとても近くにある。

そのまま目を反らさずじっと見る。

抱きしめてもらってるだけでも安心するけれど…もっと実感が欲しい。

キス、して欲しい…かも。

そんな思いを込めてそっと目を閉じた。