「送ってくれてありがとう。」

高校生の頃、バス一駅分歩いていた道を今は八神くんが運転する車で送ってもらう。

降りる前に八神くんにお礼を言い助手席のドアに手を掛けるとーーー

「佐奈…」

「んっ…」

八神くんに引き寄せられそのまま唇を重ねられた。

それは直ぐに深いものとなり頭がだんだんぼーっとしてくる。

「…んっ、ぅ…」

車内という密室に私の声が漏れてなんだか恥ずかしい。

なのに八神くんは容赦ない。

息も苦しくなってもう駄目って瞬間に漸く唇を解放して貰えた。

「やっぱり僕も泊まろうかな。このまま離れたくない。」

甘えた目でこちらを見る八神くん。

「ええっ、痛っ。」

思い切り仰け反り助手席のドアに肘をぶつけた。きっとついさっき明ちゃんとあんなガールズトークをしていたからやたら意識しちゃう。

「佐奈、わかったって。そんなに拒絶しなくても。ちょっとへこんだ。」

大袈裟に落ち込む八神くん。

「ごめん…えと…、そうじゃなくて…」

「わかってる。ちょっと意地悪した。大丈夫。僕も佐奈を大切にしたい。家に入るまで見てるからほら。」

「うん。」

八神くんにそう言われ助手席から降りた。

私が家の中に入らないときっといつまでも車を出さないのでもう一度、お礼を告げて家の中に入った。

「はぁ…、もう意識し過ぎだって私ったら。」

その夜はいろんな意味でドキドキして中々、眠れなかった。