「類、おいで。」



私はベンチから類をマウンドまで引っ張って行った。



「惜しかったね。」



「負けたのは俺の実力不足のせいなんだよ。」



類はそう言ってそっぽを向いた。



「確かにね、実力不足だったかもしれない。

でも、技術、は誰にも負けてないの、私にでもわかる。



今回は類の気持ちの弱いところが見えたんじゃない?

ショート、貴斗君だったんだね。



ショートがボール捕って着地した時、足首が何か痛めてたんでしょう?



それに気付いたのは類だけだった。



それをタイムで伝えようとしたけど拒否されて。

その貴斗君を庇おうと今度は類が右手首痛めて、ボールがちゃんと投げられなくなった。」



類は肩をぴくりとさせた。



「本末転倒だよ。

それで負けた。



類が弱かったのは、足りなかったのは。

貴斗君を信じることだったんじゃない?」