「グレース……」

「だから大丈夫よ。全部話しても私は貴方の側からいなくなったりしない。大丈夫」

いつもと逆だ。いつもは不安で道に迷いそうなグレースをずっと側でヴェネディクトが支えてくれた。それは絶対的な安心感と信頼で繋がれた二人だけの絆だから、今日はグレースが支える番なのだ。

グレースの両手を閉じ込めて握りしめたヴェネディクトの手は力が入って左右の指が白くなっている。それでもグレースの手が痛くならないのは、ヴェネディクトが握り潰してしまわないようにしているから。

繋ぎ止めようとする強い気持ちと絶対に傷つけたくないという想い。相対する二つは、どちらもヴェネディクトからグレースへの真摯な感情から来ている。

だから信じられる。信じてもらいたい。

握り締められた手をそっと離して、グレースがヴェネディクトを安心させるように両手を握り締めた。