「あの!私がやっていいですか?」

コールドスプレーを手にしたマネージャーに声をかける。
マネージャーはどうしていいのか、鈴木と私の顔を交合にみた。

「たのんでいい?」
鈴木がマネージャーの手からスプレーをとり、私にさしだした。

「もっとカッコいいとこ見せたかったのにな、残念。」

「充分カッコ良かったよ…。
スプレーかけるよ」

「つめて!」

「腫れてはいないけど病院行ったほうがいいと思う。
テーピングかしてもらえますか?」

マネージャーが救急箱を差し出した。

「へー上手いな」

「うち、接骨院なの。お兄ちゃんはスポーツトレーナー。私もその方向に進みたくて教えてもらってるから」

「そうなんだ。」

「はい、おわり」

「サンキュっ、わざわざ来てくれてありがとう。病院、香椎の家いってもいい?」

「へっ?うち!?」

「そう。一緒に帰ってもらえる?お礼もしたいし」

「病院は…鈴木の自宅のそばがいいと思うよ?うちは…ダメっ!」

「なんで?」

「誤解されるから。うちの病院に連れていったら、家族に誤解されるから」

「誤解じゃなきゃいい?』

「えっ?」

「いや、何でもない。
とりあえず、お礼するから一緒に帰ろ。
試合終わったら、ミーティングあるんだけどすぐ終わるから下駄箱にいてよ」

優しく微笑まれドキンとした。
試合が終わり、私は下駄箱で花壇に咲くコスモスを眺めながら、鈴木が来るのをじっと待っていた。