教えて、世界。【短編】

初めは渋々って感じもあったけどやりだすと面白かった。

大袈裟かもしれないけれど色にとらわれない自分だけの世界が出来た気がした。

僕はあっという間にピアノに夢中になった。

特にグランドピアノで奏でる音は僕を完全に音の世界へ引き込んだ。

家に電子ピアノがあったんだけどやっぱり音楽室のグランドピアノは格別だ。

だから毎日毎日、放課後は音楽の先生に頼み込んで音楽室に行きピアノを自由に弾かせて貰ってた。

その代わり音楽の先生の手伝いをしなきゃならないんだけどそれは全然、苦にはならなかった。

放課後のその時間だけは僕だけのものとなった。

僕が僕である為の時間。

僕が弾き出されない空間。