教えて、世界。【短編】

何も出来ない自分がこんなにも無力なんだと思い知らされた。

僕は音楽室の窓から見える薄いグレー掛かった満開の桜を見ながら溜息をついた。

僕は二年になった。

鈴原とはあれきり会っていない。いや、会えないのだ。

実は既に退学届けが出されていたと聞いたのは二年に進級する少し前のことだ。

先生に聞いても詳しいことは教えてもらえなかった。

手術が成功したのかどうかもわからない。

先生も鈴原が退学するまでは両親とも連絡をとっていたらしいけど退学と同時に音信不通になったと残念そうに話していた。

初めこそ鈴原のファンだった女子達が泣き叫んだり騒いだりしてたけど日が経つに連れそれも落ち着きを見せ始めた。

けれど僕には鈴原のいない学校は急に音が無くなったように思えた。

僕は色も音も失ってしまったのか。