教えて、世界。【短編】

「聞いてどうすんのよ。篠崎くんの見える世界がたまたまそうだってだけでしょ?」

なんてことないように言う鈴原に僕の方が戸惑ってしまう。

もしかして…気を使ってるのか?

それとも興味ない…とか?

僕が真意を探ろうとしていると鈴原は言った。

「あのさ、篠崎くんはそれを受け入れてんの?」

「えっ、受け入れるって?」

「だから、色がわからないってこと。」

色がわからないってことを…受け入れる?

少し考えてみる。

自分の置かれている状況を。

そして、僕は胸を張って鈴原に言った。

「ああ。そうだよ。その事実を受け入れて、だから僕は白と黒の世界で生きていこうと思った。」

僕にはピアノがある。

没頭出来る世界がある。

僕のいるべき場所だ。

僕の話を聞いた鈴原は親指を立てて言った。

「格好いいじゃん。」

「そ、そんなこと…」

鈴原のストレートな誉め言葉に急に恥ずかしさが込み上げてくる。

「白と黒の世界かぁ…悪くないね。」

この時の鈴原の寂しそうな横顔をこの先、僕は忘れられなくなるのだけど。