教えて、世界。【短編】

「上手いじゃん。ピアノ。」

「えっ、ああ…ありがとう。」

褒められて悪い気はしないけど…

ごくごく普通の生徒である僕からするとクラスメイトととはいえ校内一の人気者の鈴原とそう話すことはない。

なので当然、会話が続かない。

「放課後いつも弾いてるよね。」

「ああ…うん。」

「僕さ、死ぬかもしれないんだ。」

「ええっ、うわぁ、いったた…た。」

突然の告白に驚いて思わず尻餅をついてしまった。なのに…

「マジかっ。その驚きよう、ウケるわ。」

僕の目の前でお腹を抱えて笑い出す鈴原。

直ぐに立ち上がると僕は鈴原を睨み付け言った。

「からかったのか？軽々しく死ぬとかそんなこというものじゃない。」

ちょっと人気があるからって何を言っても許されると思ってんじゃないのか？

嫌悪感を露骨に表すと

「じゃぁ…、本当の話だったらいいのか？」

真顔で聞いてきた。

「ほ、んとう…なのか？それってーーー」

「だから～、簡単に信じちゃ駄目だって。嘘に決まってんじゃん。篠崎くんいつも真面目だからついからかいたくなった。ごめんね、邪魔して。マジ切れされる前に行くわ。」

僕の言葉を遮って鈴原は一方的に言うと音楽室から出ていった。