ぐじゃっ、と詩優がその紙を丸める。
まだダンボールの底にあるのは写真……
誰かが殴られて、ナイフで切りつけられている写真ばかり……
……きっとこの写真で殴られている人の血で書かれた文字なんだ…
詩優目には怒りしかない。
呼吸をして、落ち着くと
「康、あいつらには"狼犬"探しは俺と幹部に任せろって伝えて」
その声はいつもより低い……けど冷静さは少しだけあるみたいだ。
「わかりました」
それだけ言って康さんは部屋を出ていった。
詩優と2人だけの空間。ピリピリとした空気が流れる。
「…ちょっと行ってくる」
詩優が玄関に向かう。
「…ダメ」
服の袖をくいっ、とつかむと詩優が後ろを振り向く。
「…深呼吸して」
私がそう言うと詩優は大きく息を吸って、吐いた。ほんの少しだけだけど、さっきよりも表情が良くなって
「また何かあったらすぐに連絡して」
と、私を抱きしめる。
強く、強く抱きしめられて………詩優は自分を落ち着けるかのようにまたゆっくり呼吸をする。
「…うん」
ぽんぽんと私の頭を撫でてくれる。
大きな手……
「…じゃあ、行ってくるな」
そう言って詩優は私の体を離すと、外に行ってしまった。



