「海斗。俺のこと、まだ殺してないけどいいの?」
どこからか聞こえてきた声。
その声に私は目を開いて、その声がした方へと目を向ける。
倉庫の入口に立っていた人物は
詩優だ。
腕や足からは血が出ていて、ふらふらしている。
たぶん、立っているのもやっとの状態。
「…まだ死んでなかったのか」
海斗さんは獲物を変えたように銃口を詩優へと向ける。
「…!!!」
待って……撃たないで……
詩優を殺さないで……
さっきと同じように海斗さんに抱きついて阻止しようと思ったのだが、体が言うことを聞かない。
みぞおちを1発殴られたせいで立ち上がることができないんだ……
「俺はずっとお前が嫌いだった」
話し出した海斗さんの声には怒りが込められている。
「何も持ってないお前が好かれるのが気に食わない。だいたい先代たちは間違ってる。
俺の方が雷龍の総長に相応しかったはずだ。なのに何を思ってお前なんかを総長にしたのか……俺には理解できない」
…海斗さんが何年間も思っていたこと……だろうか。
「お前が総長になってからの雷龍は何て呼ばれてたか知ってるか?
…"落ちた龍"だ。だから俺は雷龍が他の族から舐められないように喧嘩を売って強さを見せつけた……
なのにそんな俺をお前は追放した………俺はお前が許せなかった。だからそのあと、鳳凰に入ることに迷いなんてなかったんだ」



