「早く」
にやりと口角を上げて笑う詩優はなんだか意地悪な顔をしている…
…自分から離れていったくせに……
「…しゃがんでよ」
キスしたくても詩優の背が高いせいでキスできない。今の距離では私が背伸びしただけでは届かないんだ。
「ちび」
ふっ、と笑ってくる。やっぱり意地悪だ。
私があんなこと言ったからこんな意地悪するのだろうか……
私も少しムキになって、ぎゅっと詩優の服を掴んで精一杯背伸びをする。
…でも、やっぱりそれでも詩優に届かなくて……
キスしたいのにできない…
もう一度、プルプルと足が震えるくらい限界まで背伸びをしてみてもやっぱり届かない。
「意地悪しないで…っ…」
ついには詩優の目を見つめて、お願いしてみる。
「先に俺に意地悪したの花莉だし」
「…だって………」
……バイトしたいだなんて言えないし…
私だって詩優といられなくなって寂しいとか思ってるもん。
「んっ…!」
いきなり唇に触れた柔らかい感触。
角度を変えて何回も唇を重ね合わせる。
あんなに意地悪されたあとのキスはなんだかすごく甘く感じられた。



