「行ったとしても私、詩優が泳いでるの見てるだけだからねっ!!」




私が必死にそう言うと「嘘」と詩優が口角を上げる。どうやら仕返しをされたようだ…




「……詩優の馬鹿…嫌い…」




もちろん嫌いなんていうのは嘘。
仕返しをされたのが悔しいだけ。




「……嫌いなの?」




寂しそうな顔で言う詩優。だから私はこう答えるしかないんだ。




「…好き」




私のその言葉で「知ってる」と満足そうに言う。




………知ってるくせに…わざと言わせたんだ…




「………俺も好き」




この家ではいつも痛い思いして、辛い思いしてばかりだった。なのに今はこの家でこんなに明るい気持ちでいられるなんて…




詩優のおかげだ。
私をあの日、連れ出してくれたから。




感謝してもし足りない。





"お前のこともらってもいい?"





その言葉に頷いた時から……いや、詩優と出会ってから私の人生は変わりだしたんだ。