ぎゅっと自分の母親を抱きしめる花莉。2人ともすごい泣いていた。
俺と榊はただ2人を見守っていた。
「…冬樹くんから…話は聞いたわ。花莉を助けてくれて本当にありがとう、夜瀬くん」
帰り際に俺にまで頭を下げてくる花莉の母親。
「いえ。惚れた女なんで、助けるのは当然」
「今度ぜひお礼をさせてほしいのだけど…」
「礼なら大丈夫です。だからこれだけ聞かせてください。
あんたは…また花莉と暮らしたいですか?」
「………こう言うのは許されることじゃない…ってわかってるけど、もう一度花莉とやり直したい…」
花莉が俺を見つめているのがわかる。困った顔で……
「…その意思があるのはわかった。でも、これは花莉が決めることだから」
本当は手放したくなんてねぇ。これっぽっちも譲る気なんてなかったんだ。
でも……安心したように母親の腕の中で泣いている花莉の姿を見たら………もしかしたら…花莉は母親と暮らした方が幸せなんじゃねぇかとも思ってしまう。
母親か、俺か、選ぶのは花莉だ。
詩優side.end