「……誰でもいいじゃん…」
「よくねぇ」
もう何も聞かないでほしい。もう許してほしい…
「…………雅さんに…納得してもらったら…私に告白……するって言ったの詩優でしょ…それまで言わないもん…」
詩優は黙り込んだ。私の目を見つめたまま。
私の涙を指で拭っていた手を止めて、頬に手を滑らせる。むにっと優しく頬を引っ張ると、
「……あー………ごめん。余裕無さすぎた……」
と言って私からそっと体を離した。わしゃわしゃと自分の頭を搔く詩優。
…余裕無かったの……?あの詩優が?いつも余裕たっぷりの詩優が…?
…いつも余裕なんてなくなればいいんだ
心の中でそう呟いた。
詩優はいつも余裕な顔でキスしてくるし、私に触れてくる。ドキドキしたり、嬉しくなったりするのも私だけ……
だから詩優も余裕がなくなれば平等な気がする。
「……もう……私が許可するまで触れてくるの……禁止…」
私がそう言うと詩優は「え…」と言ってしょんぼりしていた。なんか子犬みたいで可愛い…
「手、握るのも頬に触れるのも…抱きしめるのもダメなの?」
確認するかのように言う詩優だけど私は容赦なく
「…ダメ」
と返したらまたしょんぼりしていた。
そもそも付き合ってもないのにキスするのおかしい……よね?
これが普通なんだ。
私はベッドからゆっくり起き上がって、「詩優のばか」と言い残して部屋を出た。



