「……これ以上すると襲いそう」



詩優はゆっくり私の頭を撫でる。



「……それは…や、だ……」



襲われるのは嫌だけどキスしたいなんてやっぱりわがままなのだろうか…



「じゃあ学校行こうか。下まで送ってくから」



離れたくない。
けど、そっと手を離した。



2人で乗る車も広いけど、1人で乗る車も広すぎて寂しいくらいに感じた。












学校に着いて、教室に入ると、いつも通り騒がしかった。みんなの視線の先を見ると、倫也と明日葉が女の子たちに囲まれてお菓子を食べていた。



餌付け?



お菓子を食べて幸せそうな明日葉の顔。女の子たちに囲まれて嬉しそうな倫也の顔。




私は静かに自分の席に座って、ただスマホを眺めた。




「妃芽乃さんおはよ」



登校してきたばかりの八王子くんがにこにこと私に笑顔を向ける。



周りの女の子たちの視線も一気に私に……



……そうだ。八王子くんもモテるんだった…



「今の妃芽乃さん奪えそうな気がする」



ガタッと席を立つ私。冗談でもそんなことを言わないで欲しい。



「ほらほら、目立つから早く座って」



座るように促されるけど……私が立ってても座ってても八王子くんのせいで目立っているんだ。だから変わりないと思うのに…






「ひめちゃんは総長が惚れてる女の子だから。手、出すと痛い目みるよ?」






私と八王子くんの間に入ってくれたのは倫也だ。




「ごめんね。隙だらけだからさ、奪えそうな気がするんだよね」



倫也の前でもにこにこと笑う八王子くん。




「隙だらけだけどさ。ひめちゃんは」




倫也も同意。




……え…




「でも、奪わせないよ。うちの姫」