「あー……離れたくねぇな…」
ぎゅっと私を抱きしめて、どこか名残惜しそうに言う詩優。
…私たち…離れるの……?
途端に不安になって、詩優のシャツをぎゅっと掴んた。
「俺さ、今日は学校休んで倉庫行かなくちゃいけねぇから……京子と竜二もだけど。だから今日は明日葉と倫也に守ってもらって」
……だから詩優は今日早く起きていたんだ…いや、もしかしたら寝ていないのかもしれない…
だって本当に詩優が早く起きられたことなんてないし……
「…もう1回…………して…」
離れる前にもう一度だけ。もう一度だけ、キスして欲しい。
「……………本気でお前のこと離せなくなりそう」
「…それは…だ、め……」
今日の私は変だ。離せなくなるのがダメと言いながらも詩優の背中に手を回してる。言葉と行動が一致してないんだ。
……どうしてだろう…
「……可愛すぎ」
そう呟いて、詩優はそっと私を抱きしめていた手を解いた。
「…キスできねぇから顔上げて」
言われた通りに顔を上げると、優しく触れるだけのキスを1つ。
「康が送り迎えしてくれるから。学校行っておいで」
詩優はもう私に触れていない。触れて、離れようとしないのは私だけ。ぎゅっと詩優を抱きしめて、離れたくないと思ってる…
「……もう1回…」
キスをせがむ私は子供のようだろうか。それでも離れる前に詩優に触れておきたい。