幸せな夢を見ていた。詩優と一緒にいる夢を……


頬に触れる優しい手。その手が温かくて、大きくて……ずっと触れていて欲しいと思ったんだ…


「…し、ゆう……」


会いたい。触れたい。夢の中のように自分の気持ちを正直に伝えられたらどんなに楽だろうか。


「ここにいる、花莉」


好きな人の声が近くでする。これも夢かもしれない。



…でも…夢だったらやだ………



ぱちっと目を開いた。


「おはよ」


にっと太陽みたいにきらきらした笑顔を私に向ける目の前の彼。



私の好きな人……詩優だ。



私は自分の目を擦った。これが夢なのではないかと思ったから…



目を擦っても夢から覚めない。



何で夢から覚めないの…?



私の頬に触れている詩優の手に自分の手を重ねる。


…ちゃんと触れる……



だったら…



今度は詩優の手をぎゅっとつねってみた。



「いてっ」


詩優はそう言うけどあまり痛そうな顔をしない。私は反対の手で自分の頬をつねった。



…痛い……



ちゃんと痛みがある。じゃあこれは……




「現実?」



私の問いかけに詩優は「そう、現実」と答えて笑った。