「…できた」
花莉の声が聞こえて、振り向いてみたら…見事にボタンを掛け違えてるし……
「…ボタン掛け違えてる。やり直し」
「…………やって」
涙目で俺を見つめる花莉。さっきまで「離して」とか言ってたくせに……
「……なぁ、誘ってんの?」
俺がそう言うとぽたり、とまた涙を流す。
………え…
「…わかったから。泣くな」
花莉の涙を服の袖でごしごし拭ってから、ブラウスのボタンを掛け直す。
制服のリボンをつけて、おまけにまた上着を着せてあげた俺はかなり頑張ったと思う。
花莉の手を引いて路地裏を出ると、康の車が止まっていた。俺のバイクを車に入れてくれた後だった。
辛そうに呼吸する花莉を車に乗せて、俺も隣に座るとすぐに発進した。
マンションに着いて花莉を抱きかかえて、そのままエレベーターに乗る。部屋に入ったらベッドに寝かせて布団をかけた。
自分家の冷蔵庫の中……見事に何もない。何でこんな時に何もねぇんだよ…
仕方なくバイクの鍵を持って外に出た。