どんどん花莉に顔を近づけるおっさんの肩を掴んで、頬に1発拳を入れた。



バキッ!!!!!!



という鈍い音が響いて、おっさんは地面に倒れた。手加減なんてする余裕がなかったからしばらく起きないと思う。



「お前何してんの!?」


俺は着ていた上着を脱いで花莉にかけた。


「お前本気でバカなんじゃねぇの!?」


花莉の目には光がない。やっぱり一瞬でも手放すんじゃなかった…と激しく後悔。


「………帰って……邪魔しないで……私は……やらなくちゃいけないの」



邪魔しないでって……


「お前体売る気かよ」


「…売る」


小さく呟くように言った花莉の肩を掴んだ。


「このアホ!!!自分を大切にするくらいお前にはできねぇのか!!」


説教じみた言葉。花莉が自分を大切にしたくてもできない理由を知りながらそんなことを言った俺はかなり最低だと思う。


目の前の女の子は目に涙を溜めながら必死に口を開く。


「…私にはできないの…!普通のこともできないの…!言うこと聞かなかったら俊に殴られるのは私なの……!」



「………だったら俺のとこに逃げてこいよ」



「雅さんとしたくせに…雅さんが好きなくせに……そんなこと言わないで…」



ぽたりと花莉の涙がこぼれ落ちた。



っていうか……


「は?」


俺が雅とした?雅が好き?



「…雅さんとホテル街にいたって聞いたんだから…ヤったんでしょ

だったら私だって誰と何しようが詩優には関係ない……!!」