次の日、私は詩優にメールを送った。これが最後のお別れ。



"今までありがとう"



この一文しか送れなかった。長く続く文章でも離れることには変わりない。だからこの一文だけ。



その後、何件も電話とメールが来た。それを全部無視したけど…スマホが鳴るたびに胸が痛くなるから通知音を切った。



次の日は体がだるくて、痛くて動けなかった。学校も休んで、ずっと家にいると



ピンポーン



と玄関チャイムが鳴った。



…鍵……閉めてないかも…



私は自分の部屋のベッドから起き上がって、物音を立てないように玄関に近づいて、ゆっくり玄関の鍵を閉める。


けどやっぱりガチャリと音が鳴ってしまった…






「花莉、いるんだったら俺の話聞いて」



外から好きな人の声が聞こえてくる。詩優の声が……


じわっと涙で視界が歪む。泣きたくない。だから声も聞きたくない…



「…帰って。もう私に関わらないで」



声が震える。



「…………俺がお前のこと手放すわけねぇだろ」



詩優とすぐ近くにいるのに…遠くにいるような感じ。


「嫌いだ」と言われた方がどんなに楽だろうか。そうやって期待させるようなことは辛くなるだけ。


詩優は誰にでもそういうこと言うの?私のことはいらないのに…?雅さんを選んでもまだ私のことを手放す気がない…そういうこと?



…詩優はひどい人だ