「コウ、橘さんに挨拶しような」


ふと、いきなり私の名前が出され身体がピキーんと硬直する。

七瀬くんの腕から降ろされたコウくんは、こくりと頷き、七瀬くんの袖をぎゅっとつかみながら


「ななせ、こう、です」


恥ずかしそうに下を向きそう言った。






ーーーーーーー………か、か、かわいいいい!!





「こ、こんにちは…!
わたしは、たちばな こなって言います!
今日はコウくんとたくさん遊びたくてきました!
よろしくお願いします!」



興奮して息が荒くなってしまい、落ち着いたお姉さんキャラでいこうという企みはすぐに消え去った。

しくじった。




「お姉ちゃんと遊んでくれる…かな?」




しゃがんでコウくんにニコリと笑い手を差し出すと、恐る恐るゆっくりと

「…あそ、ぶ」

私の手を握ってくれた。



溢れ出て止まらないコウくんを愛でたいという気持ちを必死で抑える。

ここで溢れ出たらもう変態の印を押されること間違いない。

それだけは避けなければ。


「ありがとう!」









数十分後、私は天国にきました。







「こなお姉ちゃん、これやろ?」

「こなお姉ちゃんこのおかしたべる?」



なんか、めっちゃ懐いてくれた…。

こなお姉ちゃん、だって!

いや、私がそう呼んでって言ったんだけどね!?


でも実際呼ばれてみるとぐわっと色んなものがこみ上げてくるよね。


弟いいな~可愛すぎる。
欲しいよ、私も弟欲しいよ。







そしてさすが七瀬くんの弟というべきか。



とてもナチュラルに「こなお姉ちゃんかわいい」などという発言をしてくるのだ。




幼稚園ではモテモテに違いない。

もう、うっはうは状態だろう。

両手に花状態だろう。



そして七瀬くんが幼稚園児のときもそうだったに違いない。