闇に溺れた天使にキスを。




途端に夢から覚めたような、そんな感覚に陥る。


「ごめん、俺だ」

どうやら神田くんのスマホが音を立てたようで。
彼が私から離れていく。

温もりが消え、熱が冷める。


寂しいと。
素直に思ってしまう自分がいた。


「……はい」

いつも通りの優しい声音。
電話の相手が誰なのかは予想がつかない。


「そっちには今、何人いる?」

けれど少し引っかかる、彼の言葉。
心臓が嫌な音を立てる。


「わかった。
俺もすぐそっちに向かうから、収集しといて」


最後にそれだけ言い残し、電話を切ったかと思うと───


彼はスマホを操作し、またすぐ誰かに電話をかけ始めた。
慣れた手つきでスマホを耳に当てる。


「……華さん、いきなりすいません」


どきりとした。
華さんという名前が彼の口から出てきて。

彼は、宮橋先生とプライベートでも繋がっている。