きみのひだまりになりたい



さてさてやってまいりました。
屋上のさらに上。


パーカーが少し汚れてしまった。白の生地についた錆びを叩いて落とす。スカートのすそが折れていたのを直し、頬にへばりついた髪をうしろへ流す。強く食いしばって持っていた紙パックを取り、右手でぎゅっと握った。紙パックがよりいっそうつぶれて丸くなった。


先客は置いておいて、まずは本命の景色をたんのうしよう。そうしよう。




「……んあ、ふはぁああ」




フェンス側に向き直そうとしたとたん、盛大なあくびがこぼれた。わたしじゃない。うしろにいる先客だ。本当に寝ていたんだ。そして今起きたんだ。おはようございます。


反射的に振り返った。先客も気配を感じ取ったのか、もう一回あくびをしながら首を回した。




「あ」


「……あ?」




お互いにヤンキーさながらの威嚇をしたわけではない。わたしは間の抜けた一音を、先客はあくびをした口のまま声を出した結果、声音がそろってしまったのだ。


ばっちり合っている双眼は、まあるく見開かれている。おそらくわたしの目もそうなっているのだろう。鏡を見なくても想像できる。


だって、わたし、びっくりしてる。さっきよりもはるかに。