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ニナの姿が見えなくなった頃。

アレンを取り囲むように暗闇から現れたのは、彼と同じ燕尾服をまとった数人の男たち。


「随分、殺気立っていらっしゃるようですが…。一体、私に何のご用でしょうか?」


アレンの声に、険しい顔の男たちは低く答える。


『ウチのお嬢様を散々コケにしてくれたからな。新人さんに、ちょっとばかり挨拶をしに来たんだよ。』


『よくも、罠にはめてくれたな…!』


どうやら、彼らはあのいじめっ子令嬢達の執事らしい。罠を仕掛けた主人が返り討ちにあってパーティーで恥をかかされたことを逆恨みしているようだ。


「先に喧嘩をふっかけてきたのはそちらでしょう?」


『生意気なこと言ってんじゃねえよ。お前、今の状況を分かってるんだろうな?』


相手は五人。

まさか、集団で痛めつけるつもりなのだろうか。


パーティーが終わった今、城の衛兵はゲストの護衛にあたっているため、このトラブルを止める助けは来ない。つまり、卑怯な手でアレンを地面に転がしたところで目撃者すらいないのだ。

わずかに目を細めたアレンに、執事達のリーダーがニヤリ、と黒い笑みを浮かべる。


『悪く思うなよ、新人…!俺がこの世界の洗礼を受けさせてやる!後で愛しのご主人様に傷の手当てをしてもらうんだな!』