予想外の言葉に、はっ!と表情を変える令嬢達。

ざわつき始めた会場に、私の凛とした声が響く。


「このポットの中の質の良い紅茶に混じっている独特の苦味と渋み。まるで、アメルの葉のような。」


『えっ…!!』


私の言葉に、慌ててポットの中を覗き込むコックと給仕係。

すると、アレンが手に持つ装飾の施されたポットには、茶こしの網にかかるように周りとは色の異なる葉が紛れ込んでいる。


『確かに、これは間違いなくアメルの葉だ…!』


『どうして、紅茶のポットなんかに…?!』


すると、コック達にポットを預けたアレンが、すっ、と腕を組んで独り言のように呟いた。


「アメルの葉は、一目見ただけでは茶葉と見分けがつかないほど酷似していますからね。レーヴェンの肉の臭み消しに使っていた葉が誤って紛れ込んでも、気付かないかもしれません。」


謎が解けたように目を見開くコック。

それと同時に、泣き出しそうな笑みを浮かべた給仕係が、ぱっ!と私の手を取った。


「ありがとうございます、サーシャ様…!貴方が気付いていなかったら、ヴィクトル様のお招きになった大切なゲストの方のカップにも注いでいたかもしれません…!」