お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


ぽろっ…!


零れ落ちる涙。

アレンの燕尾服を濡らす雫は、止まらない。やがて、ひた…、と優しく涙を拭うアレンの指。白い手袋が頰を撫でた。


くす…っ


小さな笑い声に顔を上げると、アレンの肩が小刻みに震えている。


「…っ、な、なんで笑ってるの…?」


「ふふっ…、気づいてないんだろうなーって、おかしくて。」


(え?)


きょとん、と目を丸くした瞬間。

アレンの見たこともないほど甘い表情が瞳に映った。


「今、俺を好きだって認めたろ?」


「!!」


かぁぁっ!!

一気に熱くなる体。

口から溢れたセリフは心の声がダダ漏れで、もはや言い逃れの余地はない。後戻りなど出来ないのだ。


つぅ…っ。


すると、ゆっくり私の頰を撫でるアレン。

愛おしげなその仕草に、どくん!と胸が音を立てた瞬間。アレンは、琥珀の瞳で私をまっすぐ見つめ口を開く。


「気持ちを伝えるのは、ちゃんとけじめをつけてからにしようと思ってた。」


「え…っ?」


「でも。今だけは、執事じゃないから。」