お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。



まずい、今、きゅんとしてしまった。

小さく音を立てた胸は、とくとくと速いリズムで鼓動を刻み出す。


ここ数年、いつも敬語だったから変な感じだ。なんだか、他の誰にも見せない素を私だけに見せてくれているようで、ドキドキする。

涙が止まった私は、大人しく彼の腕の中にすっぽり収まったまま、ぽつりぽつりと会話を交わした。


「どうして、ここが分かったの?」


「モニカの屋敷に乗り込んだから。」


「えっ…!」


「サーシャがニナになりすまして聞き出したんだよ。ルコットも一緒にな。ここまでの道は、ヴィクトルが調べてくれたんだ。」


「そっか…。メルさん達も協力してくれたんだよね。」


「あぁ。」


「そういえば、さっき、メルさんと何を話してたの…?」


その時。アレンの指が私の言葉を制した。

きょとん、として彼を見上げると、わずかに熱を帯びた琥珀の瞳が私を覗き込む。


「その話は後で。今は、ニナの返事を聞く。」


「え?」


「言っただろ。逃すつもりはない、って。」