お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。



「お嬢様。お怪我は、ありませんか…?」


小さく尋ねられ、私は、はっ!として目を見開く。

顔を上げると、至近距離に不安げに私を映す琥珀の瞳と目があった。しゅるり、と手首を縛っていた縄を解かれ「だ、大丈夫…」とぎこちなく答えると、彼は、ほっ、と息を吐いている。


「あー…えっと、あの……。け、敬語に戻ったの…?」


おずおずとそう尋ねると、流れで押し切れると思っていたアレンが、照れたように視線を逸らす。


「すみません、さっきは、つい…」


「!いいの、いいの!むしろ、敬語じゃない方がいい…!」


「え?」


目を丸くするアレンを、期待に満ちた瞳で見つめる私。

八年前。出会った頃はお互いふつうに会話をしていた。敬語なんか使う間柄ではなかったというのが一番の理由だが、アレンの普通の男の子のような口調を聞くと、ただの幼馴染みだった頃の無邪気な関係に戻ったようで、なんだか嬉しい。

すると、ふっ、と笑った彼は、わずかに首を傾げて目元を緩めた。


「…わかった。ニナがそっちの方がいいなら、今だけな。」


(…!)