お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


港には、予想通り多くの密偵が潜んでいた。名のある犯罪組織から誘拐に加担した下っ端まで様々だが、ダンレッド率いる軍隊が港に攻め入ると、奇襲を予想していなかった悪党たちはたちまち慌てふためき、統率が乱れたのだ。

そして、切羽詰まって捨て身で襲いかかってきた男達と言わずもがな戦闘になったわけだが、ダンレッドはそれどころではない。メルに敵の攻撃が入ると「メルに気安く触ってんじゃねーよ!」と怒号と鉄拳が飛び、メルが敵を地面に転がすと「あー、カッコいい…っ!さすが俺の相棒…!!」とファンモード全開。

メルの国宝級に綺麗なお顔の眉が釣り上がり「ちょっと黙って…!集中切れる!」といつもの苦言を呈されるのがセットであった。

戦場でのやり取りを思い出し、思わずくすり、と微笑むメル。

するとその時。

薔薇色の瞳をわずかに細めたダンレッドが、小さく告げた。


「メル。…あの人に、会っていかないの?」


ザァァ…ッ!


二人の間を吹き抜ける風。メルは、表情一つ変えなかった。

数秒の沈黙が続く中、メルの唇が言葉を紡ぐ。


「会わないよ。」


「!」


「二度と、会わない。…彼女もそう思ってる。」