お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


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「ダン。はい、こっちを向いて。」


潮風が吹く、隣国の城下町。

かすり傷くらい放っとけば治ると主張し続けたダンレッドを無理矢理連行したメルは、器用に絆創膏を剥がし、ダンレッドの頰に、ペタリ、と貼る。

ベンチに腰掛け、「久しぶりにこんな暴れたな〜。」と前髪をかきあげたダンレッドは、ニコニコと笑いながら言葉を続けた。


「それにしても、メルが俺に会いに来るなんてビックリしたよ〜!幻かと思った!」


数時間前。

ヴィクトルの手配したプライベートジェットで隣国に降り立ったメルは、城下町に着くなり、パトロールに当たっていたダンレッドの前に現れた。

この地にいるはずのないかつての相棒に突然声をかけられ、夢かと何度も頰をつねるダンレッドの歓喜の叫びが街にこだましたことは言うまでもない。


「ありがとう、ダン。お陰で上手くいったよ。ダンなら、きっとやってくれると思ってた。」


「あはは!メルに全信頼を置かれるのは嬉しいな。こっちこそ、港に集まってた男たちはみんな指名手配犯だったから、この機会に一掃できてよかったよ。」


「…五年ぶりの共闘は引くほど騒がしかったけどな。」