「誰が、ゴキブリにしか勝てないって…?」
(えっ?)
ドッ!!
誰がが殴られたような鈍い音が耳に届く。
低いうめき声とともに地面に倒れたのは、武器を構えた一人の男だった。
体格の良い男を悠々と地面に転がしたのは、燕尾服の彼。
プツリ、と襟のボタンを外す仕草に、見慣れた執事の面影はない。
(へっ…?!)
ゴッ!!ガッ!!!
取り巻いていた男達の腹部に次々とアレンの拳が入る。
信じられない。
目の前で、的確に急所を突く打撃に、大の大人が反撃の余裕もなく地面に沈められていくのだ。
それは、かつて見たメルさんの流れるような足技とはまるで違った。精錬された体術とは別の、荒々しい獣のような“それ”は、明らかに平和主義者の動きではない。
予想外の展開に、私を捉えた男達も絶句している。
そして、ものの数分後。
私の視界に映ったのは、コンクリートの床にバタバタと倒れる男達と、内に飼っている獣を手懐けたように涼しい顔で一人立つ、アレンだった。


