お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


いつもの執事の口調は何処へやら。

胸が騒ぎ出した私だが、男達はアレンの一言に顔色を変える。


『ニナ…?ニナだと…?!このおチビちゃんは、サーシャじゃないのか…?!』


ようやく、私がサーシャ本人ではなく双子の片割れだと気づいた様子の男達。

誘拐の失敗に気づくや否や動揺が隠しきれないようだが、別人だからといってすんなり帰すつもりもないようだ。


『くそ…っ!こうなったら、王女じゃなくても関係ねえ!さっさと船に乗せて、隣国で闇市に売り飛ばしてやる!』


ぞくり、と震えが走る私。

眉を寄せるアレンは男達を黙ったまま見つめるが、私の頰の涙の跡を見た瞬間、琥珀の瞳の瞳孔が開いた。


コツ。


躊躇なくこちらに歩み寄るアレン。

すると、男達が黒い笑みを浮かべて声を上げる。


『まさか、一人で助けるつもりか?笑わせるぜ。』


『それ以上近づいたら、容赦しねぇぞ!』


しかし、アレンは足を止める気配がない。

彼の真意が読めず、不安げに見上げていたその時。怯むと思っていたアレンが進み続けることに動揺した男達が、通信機を片手に言い放った。


『二対一なら勝てるとでも思ってんのか?!』


『おい、お前ら!やっちまえ!』


ザッ!!


男の声とともに、壊されたシャッターの向こうから現れる影。

その数、ざっと十五。

人相の悪い男達が、ニヤニヤと武器を構えてアレンを囲んだ。


(まさか、ここにも仲間がいたの…?!)