ぞくり!
背筋が震えた。
今、私を守ってくれる人はいない。手を縛られて、身動きが取れない以上、ここから自力で逃げ出すこともできない。
そして、恐らく、ここはひとけのない僻地だ。叫んだところで、助けは来ないだろう。
恐怖心を必死で抑え、ふぅ、と深く息を吐く。
「私を誘拐して、どうするつもり…?」
『俺たちは、モニカって奴に金をもらって仕事をしただけだ。お前をヴィクトルから離れさせろってさ。』
『まぁ、ここで逃したら俺たちの悪事がバレちまうからな。お前にはこの国を出て、俺たちと一緒に来てもらうぜ。』
ようやく、自分が港にいる理由が分かった。
男達は、犯行の足がつかないよう隣国まで私を連れていくつもりなのだ。
私を人質にとってヴィクトルに身代金を要求するか、はたまた、誰も私のことなんて知らない地でどこかの家に売り飛ばされるか。
こんな悪人達に従っていたら、本当に家に帰れなくなるかもしれない。
その時。ふと、頭に浮かんだのはアレンの顔だった。
アレンのことだ。きっと今も、私を探して駆けまわっているだろう。
サーシャも、ルコットも、心配しているはずだ。ヴィクトルの力を借りて、居場所を突き止めようとしているかもしれない。
(でも…)
本当に、私を見つけてくれるだろうか。
船に乗せられ海に出たら、もう手遅れ。二度とアレンと会うことはない。
急に不安が押し寄せた。
溢れそうになる涙を必死に堪える。
(泣いている場合じゃない。何とかして、ここから逃げ出さないと…!)


