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「…ん…」
ふわり、と鼻に付く埃っぽいにおい。
嗅ぎ慣れない空気とともに、微かな波の音が聞こえる。
(ここは…?)
いつのまにか意識を失っていた私が、ふっ、とまぶたを押し上げた
その時だった。
『よう、おチビちゃん。気がついたか。』
「!」
低く、くぐもった男の声。
それは、どこか聞き覚えがある。
はっ!として目を見開くと、そこはコンクリートに囲まれた港であった。小屋の窓からは青い海と一隻の船が見えているが、シャッターが閉まったそこは密室であり、手首は縄で縛られている。
柱に括り付けられた体は、いくら動かしても縄から抜け出せそうにない。
その時、ふいに視界に映る二人組の男。彼らの悪人ヅラを見た瞬間、脳裏に市場での記憶が蘇った。
(!この人たち、メルさんにこてんぱんにされた、泥棒だ…!)
それは、かつて市場でトマトを盗もうとした男たちであった。
あの時はメルさんによっていとも簡単に地面に転がされていたが、今、改めて対峙すると体格がよく、腕っ節が強い印象を受ける。
すると、私の顔を見た男達が、はっ、と気づいたように声をあげた。
『威勢がいい子どもだと思ってはいたが、お前、あの時のメロンのガキだな?』
『まさか、お前がサーシャお嬢様だったとはね。あの時はよくもやってくれたじゃねえか。』


