お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。



モニカの紫紺の瞳が、弱々しく揺れた。

涙で霞む視界に映ったのは、紛れも無いサーシャの表情。


「きっと、サーシャがここにいたら、そう言うと思う。サーシャをいくら憎んだっていい。でも、人として犯すべきでない一線を越えてしまった貴方に、私は同情なんてしないわ。」


ぶわっ…!


モニカの瞳に、熱い涙が溢れた。

ぼろぼろと泣き続ける彼女は、「ごめんなさい…、ごめんなさい…」と顔を覆う。


モニカが、政略結婚ではない形で会っていたら。もし傷の手当てをしたのがモニカだったら、きっと、彼女の人柄にヴィクトルは惹かれていただろう。

いじめっ子令嬢に絡まれていたニナに、初めに優しく声をかけてくれたのはモニカだ。

それが罠に陥れる相手に近づくためだったとしても、ニナは初めて出来た友達の優しさに救われていたのは事実。

モニカは運命に翻弄された普通の優しい女の子であり、ひたすら謝る彼女は、本当はこんなことをするような悪女ではないのだから。