ーーコツ。


と、その時。

メルさんの背後から、フードを目深に被った人影が現れた。

ばさり、と外套を脱いだ彼女は、サーシャである。


「…!サーシャ…!」


ぱぁっ!と顔を明るくする私。

どうやら、メルさんは戴冠式の時間に合わせてサーシャを控え室まで連れてきてくれたらしい。


「開式ギリギリになってごめんね…!でも、もう、これでサーシャにいじわるをする人はいなくなったよ!」


パタパタと駆け寄る私は、にこり、といつもの笑みを浮かべてサーシャに声をかけた。


「見てた?サーシャ!私、やっと、ちゃんとサーシャの役に立てたわ………!」


しかし、サーシャの笑顔を待っていた私の目に映ったのは、険しい表情でぽろぽろと泣き出す彼女の姿。

ぎょっ!と目を見開くと、サーシャは、トン…っ!と私の胸元を叩いた。


「ばか…っ…!」


「っ…?!」


予想外の一言に固まる。

サーシャは、ぎゅうっ、と私のドレスを掴んで声を震わせる。


「…本当に、死んじゃったかと思ったわ…」


「…!」


「お姉さまがいなくなるって思って…、すっごく、怖かった…!」