「さぁ。これでもう言い逃れは出来ませんよ。」


部屋に響くアレンの声。


モニカがこれまでのトラブルを起こした主犯である証拠を掴むためには、モニカを騙して言質をとることが必要だった。

そして、この二週間の間に、ラズナー家が紅茶の茶葉と喉の炎症を起こす毒草を仕入れているという情報を掴んだアレンは、タバスコケーキの時のように私を騙し、紅茶を飲ませることでスピーチを出来なくさせるつもりなのではないかと踏んだのだ。

モニカが控え室に来た理由は、差し入れをするためなんかじゃない。

サーシャを倉庫に閉じ込め、戴冠式に出させないように仕組んだ第一の罠をダンレッドの機転により阻止されたため、最終手段として毒入りの紅茶でサーシャの喉を潰そうとした。

私がどんな手を使って対抗してきても潰せるよう、二段階の罠を用意していたのだ。

もはや、庇う余地もない。


「どうして、こんなこと…」


思わず、声が漏れた。

私の声に、モニカはうつむいたまま動かない。

しかしその時。

私の耳に届いたのは、消え入りそうな彼女の声だった。


「…どうして…、どうして、いつもこうなるのよ…」


「…!」


「許さない。はじめは、私がヴィクトル様と結婚するはずだったのに…!」


(え…っ?)


ドッ!!


突き飛ばされ、よろめく私を咄嗟に体を抱きとめたアレン。

そのまま駆け出し、部屋から逃げていくモニカに、はっ!と手を伸ばす。


「っ!待って!!」


捕まえようとしたものの、すんでのところで逃し、空気を掴んだ私は、扉の向こうに消えていくモニカを追いかけようと、アレンから離れた。


(逃すもんか…っ!)


しかし、勢いよく駆け出した瞬間、扉の向こうから現れた影が、ぼすん!と私を抱きとめる。


「こら。素がでてる。」


「っ?!!!」


「…もう、目を離した隙にすぐこれだ。」