目を見開くルコットと、言葉を失うモニカ。

アレンの手にあったのは、小さなレコーダーだった。

コツコツと私の近くに歩み寄ったアレンは、ひょいっ、とかがんでニナの髪を撫でる。


「もう起きていいですよ、お嬢様。演技は完璧です。」


その瞬間、ぱちっ!と目を開けた私。

何度呼びかけても微動だにしなかった私が、ぴょこっ!と起き上がり、ルコットはただただ、目を丸くしている。

すると、全てを察したモニカが、顔を強張らせ、低く呟いた。


「まさか、初めから私を騙すつもりで…?!」


そんな彼女の言葉に、アレンは琥珀色の瞳を挑戦的に細める。


「えぇ。こんな簡単に口を滑らせていただけるとは思いもしませんでしたけどね。」


そう言い切ったアレンは、間違いなく悪役の顔で。まるで悪魔のような黒い笑みは、どこか既視感があった。

用意周到な罠で敵を陥れるしたたかさは、まさに私が今までその場しのぎにやってきた悪役令嬢の真似っことは比べものにならない。