やけにアッサリ認めるアレン。
そして、ぱちりと交わる私とアレンの視線。
アレンの心の声を察した私は、私を信じて止めようとしない彼に、こくり、と小さく頷いた。
ーーすっ。
ゆっくりとカップを手に持つと、どくん、と心臓が音を立てる。
…と。覚悟を決めて、ぐいっ!と紅茶を飲み干し、タン、と白いティーカップをテーブルに置いた次の瞬間。
部屋の空気が、がらり、と変わった。
「……っ!!…か、はっ…!」
胸元を抑えて顔を歪める私。
はっ!と目を見開くルコットの前で呼吸を乱れさせる。
ガタン…!!
近くのテーブルに倒れこむと、大きな音が部屋に響いた。
「サーシャ様!!!」
ルコットの呼ぶ声に、返事はない。
床に倒れこんだ“ニナ”は、ピクリとも動かなかった。ルコットは即座に駆け寄り、彼女の体を揺する。
「サーシャ様!サーシャ様!!返事をしてください?!!」
その時。
気が動転したような震える声が、耳に届いた。
「ち、違う…!嘘よ…!あの量で、呼吸が止まるはずなんてないのに…!!」
その声の主は、顔面が蒼白になったモニカだった。
とっさに彼女の肩を掴んだルコットは、大きな声で詰め寄る。
「どういうことです!まさか、本当に紅茶に毒を仕込んだのですか…?!!」
「違うわ…!私はただ、声が出なくなるくらいの量しか入れてない…っ!こんな、こんな、窒息するような毒じゃないわ!!」
ピッ…!
(!)
その瞬間。部屋に響いたのは小さな電子音。
目を見開いて硬直していると、ルコットの視界に、ふっ、と口角を上げるアレンが映る。
「これで、言質はとれましたね。…声が出なくなるくらいの量しか入れてない、とは、一体どういう意味です?」



