お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


彼女の言い分は、もっともだった。

しぃん、と部屋が静まり返る。

膠着状態が続くが、アレンも引く気は無いようだ。

しかし、あと一歩のところで押しが弱い。


「私の用意した紅茶に仮に罠が仕掛けられていたとしても、私が黒幕とやらにはめられた一人になったということにすぎませんわ。そもそも、口にしてもいないのに、この紅茶が普通でないなんて言い切れますの…?」


モニカの言う通り、仮に紅茶に毒が入っていても、それはモニカが仕込んだことの証明にはならない。

加えて、飲んだらどうなるか分からない、というアレンの一言で、誰も紅茶を口に出来なくなってしまった。


もはや、打つ手はない…



と、誰もが思ったことだろう。


「分かった。それなら、私が証明するわ。」


前に進み出る私。

モニカでさえ、それは予想外だったようだ。

迷いなくカップを手にする私に、ルコットが慌てて声を上げる。


「ま、まさか、飲んで証明するつもりですか?!!危険です!モニカ様を疑いたくはありませんけど、もし何かあったら…!」


肩を掴んだルコットに、私はにこり、と笑う。


「平気よ、ルコット!私、よく庭に生えてる野草を拾い食いしてたから、それなりにお腹は強いし!」


「…っ!」


お腹が強い、なんて、根拠のない自信にくらり、としたルコット。

自分では埒があかないと思ったのか、彼はアレンに駆け寄り訴える。


「アレン様もなんとか言ってください…!いくらなんでも、危険です!」


「こうなったら、もう手遅れですよ。何を言っても聞かないんです、このおてんば娘は。」