お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


「お嬢様!それを飲んではいけません!」


「?!」


突然、部屋の扉がバン!と開いた。

血相を変えて飛び込んできたのは、アレンだ。

つい驚きのあまり呼吸が止まる私の横で、目を見開いたルコットが声を上げる。


「アレン様…?!一体、どうされたんです?」


すると、アレンは、ふっ、と殺し屋のような表情で低く言い放った。


「その紅茶は、罠が仕掛けられています!飲んだら最後、何が起こるか分かりません…!」


(っ?!!)


思わず、カップから手を離す私。

テーブルの上に置かれたカップが、ガチャン!と音を立てる。


罠とは、一体どういうことだ?

これは、モニカが私の目の前で注いでくれた紅茶だ。ルコットも、私の隣でいつも敵襲を警戒していた。黒幕が手を加える隙なんてなかったはずなのに。

するとアレンは、怖いくらい冷静な声で言葉を続けた。


「私は今までお嬢様の側を離れ、真の黒幕の正体とその動向を密かに探っておりました。…そして、やはり、これまでの一連の罠の裏には、ある人物の存在があったという手がかりを掴んだのです。」