お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。



「なーにやってんの、ニナ嬢。」


背後から聞こえた低い声。

はっ!として振り返ると、そこには白い軍服を着たダンレッドが立っていた。

壁に寄りかかる彼に、ルコットが声を上げる。


「ダンレッドさん?どうしてここに…?」


「んー。王子の護衛として城の警備をしてたら、会場を出て行く君らが見えたからさ。つけてきちゃった。」


にこっと笑うダンレッド。

しかし、コツコツとこちらに歩み寄った彼は、ふっ!と薔薇色の瞳に影を宿して低く囁く。


「やめときな。その先は立ち入り禁止だよ。」


「え?」


「その地下庫。扉が錆びついてて、中からじゃ開けられないから。」


低く胸が鳴った。

慌てたルコットが、声を震わせる。


「そ、それは大変です!ヴィクトル様が、ここで待ち合わせようとおっしゃっていたそうで…。もし中にいるなら、早く助けないと…!」


「へーき、へーき。王子はここに来てないから。」


首を傾げた私とルコット。

わずかに長いまつ毛を伏せたダンレッドは、腕を組んで低く続ける。


「ヴィクトル王子が、ここで待ち合わせようって?誰から聞いたの?」


「え?モニカよ。ほら、よくパーティに来ている貿易商の令嬢の…」


「へぇ…」