「あー、そういや保健委員か。健康観察表、出しにきたってところ?」
「うん。そう」
今は、1限目と2限目の間の休み時間。
本来なら朝のホームルームが終わったあとに届けるものだけど、今日は先生の話が長くて、朝は持っていく時間がなかったんだ。
「俺たち、あんま喋ったことないよね」
「今、初めて喋ったよ……」
「へぇ。そっか」
なにその興味なさそうな返事。
ちょっと悲しい。
私はいつも見てたのに。
「ていうか西野くん、何から逃げてたの?」
温度差を感じ取られたくなくて、わざとそっけない口調で問いかけた。
“西野くん”とか、サラッと呼んじゃって。ほんとは心臓バクバクなんだけど。
「女子」
わあ、予想通りの解答。
「俺、彼氏いる子とは遊ばないようにしてんの。くっそ面倒だから」
「……そうなんだ」
「けど、彼氏いないって嘘つかれることよくあって、今回もそれで。 “じゃあ切る”って言ったら泣かれた。ほんとウザい……」