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西野は今日、1限もサボらなかった。
おかげで1日中気が抜けない。隣の席だから、いやでも視界に入っちゃうんだ。
窓から差し込んだ光がブラウンベージュの髪に当たって綺麗に光るの。風が吹いたらふわってなびいて、おまけに甘い匂いがする。
香水ほどきつくないから、柔軟剤なんだろうけど、合成香料っぽくもなくて……。
なんだろう、自然の果物みたいな。
苺をかじったときの、口の中にほんのり広がる甘さに似てる……。
「きりーつ」
──────なんて考えるうちに、終礼が終わったらしく、慌てて立ち上がる。
「気をつけ、礼──」
ありがとうございましたー。って、バラバラのあいさつ。
直後、西野の周りに人だかりができ始めた。