「あ、開いてないよ……!」



顔がかあっと熱くなる。
朝っぱらからからかわれるなんて!



「そう?ならよかったねー」


淡白に棒読みで返される。
この温度差がくやしい。



「そういや、昨日も噂になってたよ」

「噂?」

「陸人くんと利奈のこと」

「え、嘘」



一緒に帰ってたから?
ていうか今、さらっと利奈って呼ばれた。



「みんな付き合ってるって言ってるけど、違うの?」


眠そうな顔。


「ないない。付き合ってないよ」

「……ふーん」


どうでもよさげな返事。

興味ないなら、聞かなきゃいいのに。



特に目的もなかったけど、スマホを開いた。
西野くんが隣にいると、むだにそわそわしちゃうから。

先生が来るまでパズルゲームでもしてよう。

そう思ってアイコンをタップした直後。




「ねえー菊本」


西野くんが、制服のそでを引っぱってきた。

なにを言われるのかと身構えたら、さらに距離を寄せてくる。



「一限いっしょにサボらない?」

「……え?」

「俺、昨日あんま眠れなくて。菊本、ひざ枕してくんないかなーって」