首を横に振っても、西野はしつこく手を伸ばしてきて。



「利奈。顔上げて」

「……」

「手貸してやるから立ちな」

「っ、やっ」


しまいには、体ごと無理やり引っ張りあげられてしまった。



「放して……」


身をよじってもびくともしない。



「もう、西野やだ……」

「……」

「西野が来なよって言うから、来たのに……なんで雛子ちゃんといるの……っ?」

「っ、ごめん」



西野がぎゅっとしてくる。

意味わかんない。



「西野は、女の子みんなに言ってるんだよね。待ってるから来なよって」

「違う、──────」

「じゃあ何? ……雛子ちゃんとイチャイチャしてるのを、私に見せつけるために呼んだのっ?」



違う、ともう一度低い声がした。



「俺は、利奈のことだけ待ってたよ」


優しい中にちょっと切なさが混じった響きに、胸がきゅっと狭まったような感覚がして。

でも……西野は手慣れてるから、甘い言葉を吐いてみせるのは得意だし、なんとも思ってなくても、こうやって簡単に抱きしめるんだ。