嘘だって思いたかった。

ここにいちゃいけないって頭では分かってても、しばらく動けなくて、西野と目が合ってようやく足が動いた。



雛子ちゃんとキス……してた。

雛子ちゃんの制服、はだけてて……。




「──────利奈っ」



西野の声。

追いかけてくる足音。


涙で前が見えないまま走った結果、廊下にあった雑巾掛けに足をひっかけてしまって、

ガシャン。


傾いた体を支えきれなくて、そのまま床に追突。


転ぶの、今日で2回目。


掛かってた雑巾たちも撒き散らしちゃって、ほんと、おかしいのなんのって。



無様すぎる。

みじめすぎる。

あまりにひどい状況に笑けてしまう、そんな自分の姿が可哀想で、目の奥がいっそう熱くなった。



「利奈」


私に追いついた西野が、隣にかがむ気配がした。


「ほら、手」


差し伸べてくれても、その手は取れないよ。

立ったら、西野にみっともない顔してるのがバレちゃうじゃん。