いつの間にか私のスカートの上に転がってたリップを拾い上げて、西野は目を細めた。
それを私の手に、再び握らせ。
「これ塗って」
「今?」
「うん」
「鏡持ってないから無理……」
ほんとはスクバの中にあるけど、西野の前でリップを塗るのを想像したら、なんか恥ずかしくて嘘をついた。
「テキトーでいいから」
「ええっ。絶対はみ出るよ」
「じゃあ俺が塗る」
「は……」
奪われたリップ。
キャップの外れる音がして、ラメ入りピンクベージュが顔を出す。
「顔こっち、よこして」
「う……」
ち、近いよ。
それに、ナチュラルに口元に触れてくる西野、怖いよぉ……。
「固く閉じないで、楽にして」
「はぃ……」
男子にリップを塗ってもらうって、どんなシチュエーションなの。
少女漫画でも見たことないんですけど……。
そう思いながら、無意識に目を閉じていた。



