でも。
数秒たっても何も起きず。
うっすら目を開けると、西野の顔は変わらず至近距離にあって。
「……しないの?」
思わずぽろりとこぼれたセリフ。
自分が言ったことを理解して、直後、心臓がドッと大きく跳ねた。
「するって何を?」
「へっ……あ、」
もっ
もしかして西野、キスするつもりなんか毛頭なかった!?
私の勘違いってこと!?
「やっ、あの……なんていうか……っ」
こんなに恥ずかしいことったらないよね!?
どうしよう、さっきとは違う意味で泣きそう。
ヘンに誤魔化しても余計に恥ずかしくなるだけだし、正直に言うしかない。
「キ、キス……するのかと、思って……」
両手で顔を覆う。
どうぞ笑ってください……という気持ちで。
そしたら西野、頭にポン、と手を置いてきた。
「そーいう顔、俺の前でしないほうがいいよ」



